千葉地方裁判所 昭和44年(モ)709号 決定 1969年10月22日
申請人 株式会社 丸井
右代表者代表取締役 青井忠治
右代理人弁護士 鬼倉典正
同 牧野雄作
被申請人 高橋弘始
主文
本件申請を却下する。
理由
一、申請の趣旨
別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)につき申請人のため昭和四四年一〇月一日の代物弁済を原因とする所有権移転の仮登記仮処分を命ずる。
二、申請の理由
申請人は昭和四四年九月六日被申請人との間に、東京法務局所属公証人小保方佐市作成同年第三〇二九号公正証書をもって本件建物につき、被申請人が申請人に対して負担する売掛残代金一〇万五三〇〇円を同年九月三〇日かぎり支払わないときは右の債務の支払いに代えてその所有権を申請人に移転する旨の契約を締結した。
被申請人は右の期限までにその支払いをしなかったので、申請人は同年一〇月一日本件建物を代物弁済により取得した。ところが、被申請人は本件建物につき申請人のため所有権移転登記手続をしないので、本件申請をする。
三、判断
申請人は、被申請人との間に結んだ停止条件付代物弁済契約の条件が成就し、申請人が本件建物の所有権を取得したのに、被申請人がその所有権移転登記手続をしないので、仮登記仮処分命令を求めるというのであるから、申請人の本件申請は登記原因となるべき物権変動が実体法上すでに発生していることを前提とするものであり、不動産登記法二条一号による仮登記を求めるものと解される。しかし、登記義務者である被申請人が登記権利者である申請人のためその所有権移転登記手続をすることに協力しないというだけでは右二条一号の要件をみたさない。
したがって、本件申請は仮登記原因の疎明がないことに帰するから、これを却下し主文のとおり決定する。
(裁判官 加藤一隆)
<以下省略>